借金の返済で首が回らない!時効がくるまでどうにか逃げ切りたい…。たしかに借金の返済には時効がありますが、時間が経てば自動的に成立するほど簡単なものではありません。むしろ、金融業者はあらゆる手をつかって時効を中断してくるので、時効まで逃げ切れる可能性はほとんどない、と言っても過言ではありません。
また、時間がたっても法律的に必要な手続きを踏まないと時効は成立しません。ここではなぜ時効がなかなか成立しないのか、成立した場合にはどんな手続きをとればいいのかを解説します。
借金の時効は「商事債権」と「民事債権」で期限に違いがあります。「商事債権」は賃貸業者から借りたお金で、「民事債権」は個人間での借金です。
「商事債権」の時効は5年、「民事債権」は10年と決められています。
ただし、以下の機関から借りている場合は10年になることもあるので注意が必要です。
時効は返済期日があるかないかで起算日が違ってきます。うっかり計算間違いして、時効が成立したと思ったら、まだ成立していなかった!という事態になると借金が想像もしていなかった額になっている可能性もあるので、起算日はしっかり覚えておきましょう。
返済期日がある負債の起算日は返済期日の翌日が起算日となります。返済期日がない場合は借金した翌日が起算日です。
では、起算日から5年ないし10年をどうにか逃げ切れば借金は帳消し!…とはいきません。簡単に時効が成立してしまうと金融業者は経営が成り立ちませんから、様々な方法で時効を中断して、なんとかお金を回収しようとします。
債権者が以下のような手続きをとると時効は無効となり、返済義務が発生します。
申し立てが受理されると、裁判所が書面で債務者に対して支払い命令を出します。債務者は、書面が届いた日から2週間以内であれば異議申し立てを行うことができます。異議申し立てが行われなかった場合、債権者は30日以内に仮執行宣言の申し立てを行うことができます。
債務者側が裁判所からの書面を無視して何もしなければ強制執行へと進み、債権者側は債務者側の財産を差し押さえることも可能になります。この場合も時効は中断となります。
少額でも返済したり、返済を約束する書類にサインをしたりすることでも時効は中断します。
これを「債務の承認」といいます。たとえ1円でも返済すれば時効は中断となります。
時効の成立が非常に難しいことがよくお分かりいただけたと思います。運よく5年または10年逃げ切ることができても、しっかり法的手続きをとらなければ時効は成立しません。
時効を法的に有効にするには債務者側が「時効の援用」の手続きを行う必要があります。
「時効の援用」とは時効が成立したという事実を、内容証明郵便で債権者側に伝えることです。
内容証明郵便には決まった形式はありませんが、いくつか守らなければならないルールがあります。
内容証明は債権者用、郵便局用、自分用の3枚分を用意します。形式は自由ですが、文字数と行数の上限を超えると効力を発揮しませんので、以下の文字数、行数を超えないようにしましょう。
縦書き
横書き
句点(。)と読点(、)も1文字として数えられます。作成に自信がない人は司法書士など専門家に相談しましょう。
証明書ができたら、3通とも郵便窓口に提出して郵便局の確認が取れると郵便局が承認のスタンプを3通すべてに押し、1通は債権者側に送付、1通は郵便局が保管、のこり1通は差出人自身が保管します。
時効援用の扱いは信用情報機関によって取り扱いが違ってきます。金融事故として扱っているところもあれば、載せないところもあるので自分の情報を取り寄せて確かめてみましょう。
ただ、借金を踏み倒している時点ですでにブラックリスト入りしている可能性が高く、新たにカードローンを申し込んだりクレジットカードを作るのは難しいと思われます。
借金の時効はめったなことでは成立しません。時効が中断すればその間にも損害遅延金などがどんどん膨らみ、借金が増えていくだけで何もいいことはありません。
返済できないと思ったら早めに弁護士や司法書士に相談して解決する道を探しましょう。