日本は毎年財政赤字が膨らみ続け、借金大国といわれています。一般の企業では借金がかさむといずれ経済的に破綻してしまいますが、不思議なことに日本は今のところ破綻する様子はありません。
そもそも国の借金はどうやって作られたものなのでしょうか。また、だれから借りていて、どうやって返済していくのでしょうか。いまの日本の借金の状況を見ていきましょう。
日本は借金大国といわれて久しいですが、国が借金をしているとはどういう状態でなのでしょうか。国の収入は国民から徴収する税金です。年によって微妙な差はありますが、税金による国の年収は50億円といわれています。その一方で、国の支出である国家予算は毎年90億円です。
つまり国を企業に例えるとすると、毎年40億円の赤字を出していることになります。
赤字の原因の一つに少子高齢化が挙げられています。たとえば現在の年金受給者の年金の出どころは現在働いている世代が納めている厚生年金や国民年金から出ています。
後期高齢者が多い日本では今後医療費もかさんでいきますが、少子高齢化で労働人口が減り、長年の不況の影響もあって税収が少なくなっていることが原因のひとつとみられています。
毎年これだけの赤字を出し続けていると、一般の企業はとっくに破綻しています。日本はなぜ破綻しないのでしょうか?
国は「国債(国庫債券)」を大量に発行しています。国債は国が発行する債券で、銀行やゆうちょなどの金融機関に買い取ってもらうことで資金を得ています。
金融機関が国債を買う資金源は国民が銀行やゆうちょに預けている預金が充てられています。
国債には利息が付き、金融機関は国債を保有することで利益を得ることができます。(国債は個人でも買うことができます)
国の借金の半分は国債といわれています。要するに、国は国民から借金をしているのです。
しかし、日本はどれほど借金を重ねても破綻する可能性は非常に少ないと考えられています。国債は金融機関が買い上げていますが、日本の国債の主な保有者は日本銀行で、国債の約半分を日本銀行が引き受けているといわれています。
少し話は変わりますが、企業は毎年必ず決算書を出します。決算書は貸借対照表(バランスシート)、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書の3つからなっています。このうち貸借対照表企業の資産と負債の状況を示すもので、企業は親会社と子会社、関係企業すべてを含めて作成する連結決算を作ることが義務付けられています。
日本の財政でバランスシートを作ろうとすると、独立法人を含めた政府関係機関の財務状況を記載する必要がありますが、日銀のバランスシートは中立性を保つ意味もあり、含まれていません。
しかし日銀のバランスシートを日本の財政のバランスシートに組み入れると、借金はほとんどなくなります。日銀が国債の半分を保有していることは先述しましたが、企業では親会社が子会社に借金をしても、同族会社での取引なので外部企業にはほぼ影響がありません。親会社と子会社で借金の返済はしなくていいという取り決めがあれば、ずっと借りたままでなんの影響もありません。
つまり日銀が保有している国債は借金とはみなされず、実質的な借金はほとんど消滅します。
政府と日銀を連結して一体化させることを「統合政府」と呼びます。たしかに日本の借金はほぼ帳消しになりますが、日銀は政府の金融政策を安定させるために独立性が尊重されなければならいという意見もあり、慎重に議論する必要があります。
また、日本の国債はほとんどが自国通貨である円建てで国内の金融機関や投資家が買っていることから、借金が返済不能になるということはまずないと考えられます。
仮に財源がなくても政府が日銀に国債を引き受けてもらい、その分の紙幣を日銀が印刷して国内の金融機関や投資家に返済することが可能だからです。
数年前ギリシャが財政破綻したことが大きく報道されましたが、その原因はギリシャが自国の通貨を持っていなかったことです。ギリシャの通貨はユーロですが、ユーロはギリシャ独自の判断で印刷することができません。自国で通貨量をコントロールすることができないので、財政破綻することになってしまったのです。
総合してみると、現在の日本の状況はまだそれほど悪いというわけではなさそうです。しかし、経済を活性化させ税収を増やさなければ借金は増え続け、大きな打撃をこうむる可能性は捨てきれません。