一昔前、世間では消費者金融からの多重債務が問題になり、貸金業法が改正されました。当時はその策が講じ、多重債務者はかなり減りました。
しかしここ数年、また自己破産の申し立てをする人が増えました。消費者金融だけでなく銀行カードローンの利用が増えたことが、一因としてあります。当然、対策を講じているのですが、まだ効果が表れたとは言えない状態で、自己破産を行う人はまだまだ多くいます。
本来ならば早めの対策をするべきでしょうが、どうしても遅れがちになってしまうようで、自ら気をつける必要があります。多重債務にならない為にも、まずは自己破産について知っておくことも大切なのではないでしょうか。
カードローンでは、一時は減ったのですが今また自己破産が増えていると言う現状があります。2018年の個人の自己破産は、裁判所がまとめたデータによると件数としては7万3084件で6年ぶりの多さですが、増加自体は3年連続で前年比6.2%増だそうです。
以前は、消費者金融からの借り入れが増えたことにより自己破産が増え、自殺者も多く、社会問題になった時代がありました。闇金問題や、金利の高さも含めた過剰な貸し付けなど、借金に対しての問題が山積みでした。
その為、個人への貸し付けに関する問題を解決する目的で、貸金業法が改正されました。この改正により、上限金利を整えたり貸付額に上限を設けたり、違法な取り立ての規制が強化されました。
その効果により多重債務問題も一旦は落ち着いたのですが、昨今、銀行のカードローン業務の参入増加や強化により、良い意味でカードローンが利用しやすくなりましたが、逆に多重債務が再燃したと言っても過言ではない状態にもなってしまいました。
これは、銀行カードローンは貸金業法の対象にはならないことが要因の一つだと言われています。実際に2014年には銀行カードローンの貸付残高は5兆円を超え、消費者金融(約4兆5000億円)よりも多くなっています。
結果、2018年に入って銀行はカードローンによる融資を業界全体で自主規制する動きをとり、2018年の年末では、カードローン残高は8年ぶりに減少しました。
しかし実際には、貸付残高はまだ5兆円を超えていますし、多重債務者が自己破産者になるには時間がかかる為、自己破産が減少するには、まだまだ時間がかかりそうです。
そもそも銀行の過剰融資は、顧客には銀行というブランドによる安心感があること、銀行側としても保証会社になっている消費者金融の審査に頼っている点、また顧客が返済不能になっても保証会社が未払い分を保証してくれることで損をしないシステムから、安易に融資が行われやすいことが一因にあります。
多重債務者が増える要因として、簡単にお金が借りられる状況だったのは確かかもしれません。また、返済計画をしっかりと立てていないと言う面ではそうなのかもしれません。
ただ、借金が返せなくなったら自己破産すればいいと安易に考えている人が多いというわけではないでしょうが、それでも自己破産がどういうことかを知るだけでも意識がかなり変わるのでないでしょうか。そもそも自己破産とは、ただ借金を返さなくて済むだけのものではありません。
その自己破産ですが、大きく分けると「同時廃止」と「管財事件」の2つに分けることができます。
言葉だけではよくわからないかもしれませんが、要は、財産を持っているか持っていないかで、対応が異なってくると考えればわかりやすいでしょう。
ちなみに自己破産の手続きの流れを簡単に説明すると、このようになっています。
自己破産の一般的な手続きの流れ(同時廃止)
これは同時廃止での流れになっていますが、最初の相談から申立をするまで書類の準備等もあり、まずそこで時間がかかります。(3ヶ月ほど~)その後の申立から免責の決定までも時間が必要になります。
ですので、おおよそ半年は少なくとも時間がかかると考えておいた方がいいです。
状況によっては、もう少しかかるかもしれません。
それよりも時間がかかるのが、上記で管財事件としている財産処分の必要がある場合です。この場合は、財産の調査や債権者にどう分けるかも決めないといけないので時間がかかります。
資産の内容や買い手の有無で時間の掛かり方が変わるので一概にいはいえないのですが、場合によっては1年以上かかることもあります。
自己破産では、ただ借金がなくなるだけではなくそれに伴うデメリットもあるのですが、まずはメリットについて説明します。
自己破産のメリット
借金が増えすぎると、「返済をどうしようか。」「返済をしたら生活ができなくなる。」など、そればかりに考えが集中してかなりのストレスとなります。酷い時には、仕事も手につかないでしょう。
しかし、自己破産手続きを行えば、借金の支払い義務がなくなります。これは一番大きなメリットと言えます。当然、手続きが開始されれば返済の催促は止まります。その為、借金に対するストレスはかなり軽減されることになります。
ただし、お金の支払いと言うのは、生活していればカードローン以外にもあります。カードローンの返済は止まったとしてても、他に止まらない支払いも当然あります。
自己破産してもなくならない支払い
誰もが負うわけではない支払いもありますが、自己破産すれば全ての支払いが止まる訳ではないことは知っておく必要があります。また、自己破産の手続きに弁護士や司法書士の方にお願いすれば、当然その費用もかかります。
とはいえ、弁護士や司法書士の方は、お金がないことはわかっています。「法テラスによる費用の立替え」と言う方法もありますし、それぞれの事務所で無理ないよう対応してもらえます。また、例えば生活保護の受給中など、状況によっては費用の猶予や免除を受けることも可能です。
自己破産は、免責(責任を負わない)と言って、借金の支払い義務を負わなくてすむのですが、当然、それに伴うデメリットもあります。たまに「借金が払えなくなれば自己破産すればいい。」と安易に考える人もいますが、その考えは危険です。
自己破産のデメリット
官報とは何だろうと思う人も多いでしょう。
実際には、関係者以外、普段官報を目にすることはありません。ですので、これはあまり心配する必要はないと言えます。
仕事については、私は関係ないと思う人も多いでしょうが、それ以外に関しては誰もが関係している大きな問題と言えるでしょう。
自己破産だけでなく他の多重債務の対策に関してもカードローンの借り入れも、基本的には家族に内緒に行うことは可能です。
しかし、自己破産するにあたって資産があり、その処分が必要になった時、家族に内緒にすることはかなり難しいのではないでしょうか。
それよりも、財産の処分自体が大きなデメリットと言えます。
自己破産のデメリットに、「今後しばらくの間、新たな借り入れができなくなる。」とありますが、これは個人信用情報機関に自己破産の記録が残ることが原因です。
個人信用情報機関というのは、クレジットやカードローンの利用に関する情報を申込者の個人情報(住所や連絡先など)も含めて記録する機関になります。
その個人信用情報機関は3機関(株式会社シー・アイ・シー、株式会社日本信用情報機構、全国銀行個人信用情報センター)あり、金融機関はそのどれかに会員登録し、信用情報を記録したり照会します。また、その3機関は情報共有することもできる為、会員ではない機関の情報も照会できることになっています。
その記録は信用情報と言って、消費者金融やカード会社、銀行がカードローンやクレジットカードの申し込みの際に個人信用情報機関に照会することができます。そして、ローン等の審査の判断材料として使います。
そもそも信用情報は、個人の氏名住所やカードローン等の契約内容もわかるのですが、延滞や自己破産等、返済に関しての状況もわかるようになってします。
その中で延滞や自己破産などの情報は金融事故情報とも呼ばれ、金融事故情報があれば、当然新たなカードローンの申し込みの審査では落とされる要因になります。
ですので、新たな借り入れができなくなるのです。これは、クレジットカードでも言えることでしょう。
ただ、ここで救いなのは、新たな借り入れができないのは、「しばらくの間」というのがあります。と言うのは、この(他の情報もですが)金融事故情報の記録が残るのは一定期間となっているからです。
一定期間が過ぎれば、その記録は消えます。そうすれば、審査に(絶対とは言えませんが)通る可能性が出てきます。(金融機関によっては、全く信用情報の記録がない場合も用心して審査に落とす可能性もあります。)
その記録があるのは5年とされています。カードローン申し込みしてから5年ではありません。例えば普通に借金を完済したとしても完済してから5年です。自己破産の場合も、免責が決定してからに5年なります。
また、銀行が会員登録している信用情報機関にあたる「全国銀行個人信用情報センター」では、記録される期間は10年となっており、他機関よりも長いので注意が必要です。
ただ、消費者金融の中には、「ブラックでも借り入れ可能」と謳って金融事故を起こした人でも借り入れを受け付けているところがあります。全部ではないのですが、その多くは闇金である可能性があるので、どうしてもお金が必要だとしても気をつける必要があります。
自己破産ですが、どんな借金だろうと手続き可能かと言えば、そうとも言えません。自己破産は裁判所に認められる必要があるのですが、「免責不許可事由」と言って、自己破産が認められないこともあります。
自己破産が認められない場合
他にも例えば、最初から自己破産をするつもりであちこちからお金を借りたのにも関わらずどこにも全く返済をしない場合など、確信的な借り入れでは認められない可能性が高いです。
もちろん、よほどのことがない限り、そうそうは不許可になることはないでしょう。
自己破産の手続きは、先に説明した通り場合によっては家を処分したりと家族に知られたり迷惑がかかることがあります。その為、躊躇する人もいるでしょう。
多重債務の対応としては、他にも方法があります。
自己破産以外の方法
おまとめローンは、借り換えローンともされていて、複数社のカードローンを1か所にまとめることで金利が低くなったり毎月の返済額が減ったり、と言うメリットがあります。
しかし、必ずしもメリットだけでなく、毎月の返済額が減ることで返済期間が長期に渡れば、利息の総額が増える可能性もあるので、一度試算してみる必要がありますし、おまとめローンに申し込みしてもこちらも審査があるので、必ずしもできるとは限りません。
任意整理と個人再生に関してですが、どちらも借金の減額は可能ですが、自己破産と違って借金そのものが無くなるわけではありません。債権者と交渉したり、裁判所に申し立てを行うことで借金を減らします。これらを(自己破産も含めて)債務整理と言います。
もちろん、任意整理や個人再生もまた言葉は違えど、それとわかるよう個人信用情報に記録が残ります。その為、やはり自己破産同様、新しくカードローンやクレジットカードの申し込みをしても、一定期間は審査に落ちる可能性が高いです。
この期間ですが、やはり5年となっています。ただし、この5年は、完済してから5年になるので、完済までに時間がかかればその分記録が消えるまで時間がかかることになります。
カードローンを使ってお金を借りる理由は人それぞれで、本人に大きな責任がある場合もあるでしょうし、致し方ない事情がある場合もあるでしょう。それを考えると、多重債務者を一方的に非難するわけにもいかないかもしれません。
しかし事情はどうであれ、借りたお金を返さないまま放置することは、よくないことです。もし、どうしても返せないのならば、説明したように対応をする必要があります。
その方法はいくつかあるのですが、やはり自己破産を最終的な方法として選択する人は多くいます。もちろん、借金の返済が免除されると同時に、説明したようにそれに伴うデメリットもあります。
自己破産をした場合の状況や影響は、かなり大きなものです。資産を処分すれば家族にばれますし、しばらくの間は新たな借り入れはできないので、収入によってはやりくりが大変な人もいるでしょう。
人間誰だって失敗はあります。自己破産はそのリスクを知った上でしっかりと考えて対応していけば、やり直しは充分にできます。これらの話は、今後の生活の参考になるのではないでしょうか。